難病の、彼とのお付き合い。/障がい福祉の【りあるコラム】
難病の彼とは、かれこれ10年の付き合いとなる。
当初はパソコンを操作して会話のやり取りをしていたが、今では唯一動く目線だけを頼りにやりとりしている。
五十音の書かれた文字盤を読んでいき、瞬きしたところの文字を一つ一つ拾っていく。
この作業が、非常に大変ではある。
例えば【足をハの字にする】という文章を読みとるにも、そのときの本人の瞬きの動かしやすさによって早ければ10分、時間がかかるときは30分以上かかってしまう。
先日事故を起こしてしまった。
文字盤を読み上げて文章にし、いつも通り確認しながら介助した。
その1時間後に【その介助を求めていたのではない】と言われてしまった。
その介助行為自体がやり直しのきくものではなく、むしろ身体に対して重大なミスであった。
こちらの受け取りも重く、沈痛な思いで謝罪をした。
そして同じミスを今後繰り返さないという自信もなく、これからも引き続き介助者の一員として入っていいのかを尋ねると、そこはしっかりとOKの視線を送ってくれた。
10年介助していても、毎回緊張しながらやっている関係性だが、それなりに信頼してくれていることがわかった。
だからといって気持ちの負担が軽くなるわけではないが、自分のやってきたことが間違ってはいない、という自信は、ちょっぴり持てた一件であった。